外回転術、痛すぎた

朝の8時半ジャンヌ・ド・フランドルで、この日は逆子直しのversion(外回転術)という施術をしてもらうことになっていた。指示通り朝ご飯を食べずにHopital du jourという場所に行ってみると、まるで入院病棟のような場所で、その中のひとつの個室に案内された。手術着のような白衣に着替えるようにと言われ、点滴の準備が始まる。 何だか病気で入院しているみたい。点滴が始まる前には、随分と時間をかけてたくさんの血を抜かれ(この後投入する子宮を柔らかくする薬との相性とかを調べるためらしい。それにしても)、やたら要領の悪いお姉ちゃんに心電図を取られた。人生初の点滴は、思ったほど痛くはないけれど、あまり気分のいいものでもない。検査が終わったのか、薬剤を投入し始め、これから薬が効くまで一時間ほどこのままとのこと。いちいち時間がかかる。その間、アネステジスト(麻酔科の医師)が問診に部屋まで来てくれた。何となく、この人になら麻酔打たれても大丈夫そう、という感じの、安心感のあるお兄ちゃんだった。今のところ無痛分娩は、やっぱりやめようと思っているのだけれど。
ばたばたとおトイレに行かせてもらうと、丁度下の階からversionの準備ができたと連絡が入る。ベッドがガラガラと運ばれてきて、愛想のいいお兄さんがこっちに移るようにと。横になった私が今度はガラガラと階下に運ばれる。
地下はどうやら、出産用の部屋、salle d'accouchementが並んでいる場所らしく、sage femmeも緑の服で、見たことのない人ばかり。私が移されたのは、陣痛が始まってから子宮口が開いて分娩室に移るまで、待機する人用の部屋だったとか。
ここからまたしばらくモニタリング。胎児の心音と私の子宮収縮が測られる。
しばらく待つと、体格のいい肌の浅黒いお医者さんと、女性の2人組が、エコグラフィーの機械と一緒に入ってくる。朝から入れ替わり立ち代り違う人が現れて、この人にされるのか、あの人にされるのかと気を張って待っていたけど、すでにぼんやりし始めていた頃現れたこの2人が担当とはすぐにピンと来なかった。少なくとも、実際に行なう人は、年のいったおじさん2人だとばかり思っていたので、この女性が冷たい手で私のお腹を触った時はなんとなくえ?という感じだった。
エコグラフィーで赤ちゃんの位置を確かめると、それは突然始まった。ムッシュじゃないの?と思う間もなく、女性のとんがった冷たい人差し指と親指が私の下腹部を猛烈な力で押す!ありえない激痛!すぐにもう片方の手(というか指!)で今度は肋骨のすぐ下、赤ちゃんの頭があるあたりをまた猛烈な力で押す!ていうかそんなピンポイントで押されたら痛いに決まってるし、動くものも動かんワイ!リラックスして、とか息を吸って、とかムッシュに言われるけど、ありえない!と思いながらもしばらく頑張ったが、赤ちゃんの体が浮き上がって縦に硬くなっているのを感じたので、もうやめよう、と決心した。運が悪かったのだと思うけれど、この女性はあまり経験がないのか、本当に信じられないほど痛かった(この女性はエコグラフィー当てるのも何だか痛かった)。やめます。もういいです。と言うと今度はムッシュが変わってもう一回だけどうだと言う。何が痛かったかと。押し方です、と言うと、これならどう?と手を横に当てる。手が大きいし暖かいし随分楽そうなので、ではもう一回、ということになった。でもやっぱりありえない痛さ。(おそらく最初に押された場所がうっ血してたのだと思う。)ムッシュが言うように、赤ちゃんには問題なかったみたいだけれど、私の体が耐えかねたし、とても回る感じがしなかった。
終わった後、同じ部屋でさらにモニタリングすること2時間。私はさすがにグロッキーで、疲れて寝たいのだけれど、横になっている間、心臓がずっとばくばくいっていた。でも赤ちゃんは確かに、問題なさそうだったので、あんな痛いのを我慢する方が良かったのかな?いや、でもそれなら帝王切開で産むほうがまし!と思いながら、半分眠り、半分気を失って長いこと横になっていた。
ようやく上の個室に戻ると、もう2時半を回っていた。最後に嬉しかったのは、点滴から開放された後、部屋でお食事が出たこと!簡単なものだったけど、ただのパンとバターとお水があんなにありがたく感じたことはなかった。(ラザニアは長いこと付き合ってくれた夫にと思ったら、食べた後でもたれたとか。)もう一つは、今日赤ちゃんの頭のサイズを測った感じでは、骨盤の大きさを通りそうだから、逆子でも普通分娩できそうだということ。よかった!次はもう、出産の兆候があったときか、29日に予定されてた定期検診で来ればいいとのこと。逆子は直らなかったけど、一山乗り越えて、あとは産むだけだという気になった。
注射のときも感じたけれど、どうも私は薬物を投与されることに体が慣れないのか、気持ちが受け付けないのか、終わった後で多少気がめいる。押されたところはあざになって痛いけれど、お腹はすいているし、赤ちゃんも平気そうなので、何とか前向きになる要素が欲しく、夫に外食を提案。以前から気になっていた、近くのモロッコ料理を食べにいくことにした。なんとフランスに来てから、初体験のクスクス!それだけで嬉しかったし、アラブ宮廷風のお店の雰囲気も良く、十分に美味しくて、とても楽しめた。あの蒸したてのクスクスのふわーっとした感じからアラブ人が受け取るものは、炊き立ての白米の匂いや輝きを見て満足する日本人の気持ちと近いんだろうな。御飯に味噌汁、バゲットにワインとチーズ、みたいな感じで、クスクスに鶏や羊のグリル、これが絶妙に合う。野性的な料理だなあ、と思っていたら、お店のお客さんも見事に男ばっか(なぜ?)。昼間の痛みを忘れたのはいいのだけれど、2人前は信じられないほど多かった。(全部よそってしまった私たちも私たち・・・。)クスクスで逆子直ったら面白いねー、なんてふざけて話していたが、満腹すぎて、赤ちゃんも回るどころではなさそうだった。

  • 予定日まであと 32日